はじめてのアートセラピー
私(加藤るり子)とアートセラピーの出会いは、大学のとき…久保貞次郎先生という児童美術の先生に出会ったことがきっかけ。
先生は世界中のこどもたちの絵を見せ、こう言ったんだ。
がみがみ言うお母さんを描く子どもの絵はみんな、すべて口が大きいんだ。
チック症の子はね、黒い線を格子のように描くし、癲癇の子は、発作のときオレンジ色が出てくるんだ。
そして、これは、万国共通なんだって。
言葉を越えたすごい世界だ、と思った。
そして、そのとき、決めたんだ。
日本にはまだアートセラピストという仕事はなかったけれど、絵のセラピーをしよう。アートセラピストになろう! と。
それから、社会福祉の大学に編入。
卒論も精神分析のゼミで、「精神病院におけるアートセラピー」というテーマだった。
社会福祉を選んだのは、幼少期のいじめられ体験から弱者の見方になろうって決めていたからだよ。
苦しんだり、悩んだりしている人に一緒に寄り添う仕事がしたいと思っていた。
そして、その中でも一番の弱者であった精神障害者を対象に選んだんだ。
日本芸術療法学会もその頃はまだ小さい研究会で、最初から参加させてもらうことができた。
患者さんの絵を研究したり、臨床の体験は心からわくわくしたね。
そして、念願の精神医療の現場へ!
川崎に関東で初めてできた統合失調症の社会復帰施設に一期生として就職。
そして、統合失調症の患者さんと格闘。
毎日がわくわく!
統合失調症の患者さんの絵の世界はおもしろかったよ。
孤独な世界、分裂している二つの世界、恐怖感や怒りの世界、いろいろな世界を絵を通して感じたよ。
妄想、幻覚、幻聴。
絵は言葉を越えて、その人のまるごとを表してくれる。
うれしかったね。
こっちが興味を示し絵を尊重すると、絵が好きじゃない患者さんまでどんどん絵を描いてくれる。
これが、その後の私のライフワークでもあるアートセラピー実践の始まりとなったんだ。