
「番人」
近寄らないで、侵さないで。この先は、私の神聖な場所。
何人たりとも立ち入ることは許されない。
くだらないかもしれないけど、こっちは毎日必死に人間やってるんです。
もうすり減った身体しか残っていない。
あなた方には十分明け渡してきたでしょう。
この場所だけはゆずれない。

「人間をやめた日」
息がしづらい、酸素がうすい。
透明なのに圧迫感だけは一丁前な檻の中。
何年もこんな所に閉じ込められて、嫌気が差してくる。
いつしか爪も伸び、牙も生え、随分姿も変わった。
この檻を破る準備はとうの昔に出来ていたらしい。
あとは自分の意思一つ。
「やめてやれ、人間なんか」 檻をねじ曲げて外へ出た。

「悪意」
ぐるぐる ぐるぐる ぐるぐる
よぅく見てください。 味わってください。
不快でしょうか、気味が悪いでしょうか。
あなた方が私にくれたものですよ。

「エラー」
生まれてくる場所をまちがえた。
それに気づくのも遅過ぎた。
こんなはずじゃなかった、身体はもう真っ黒だ。
早くかえりたい。迎えに来てください。
あなたまで光の速さでどのくらい?

「絶叫の中の傍観者」
「ああああああー ー ー ー ー ー ー」
ふとした時に頭の中に響く、泣き叫ぶような金切り声。
あーあ、またやってら。
そんなことしても何も変わらないのに。
一体何度同じことを繰り返せばこいつは気が済むんだろうか。

「サイン」
言葉も感情も飲み込んでばかりいたら、
どうやら腹の底にたまっていたらしい。
腐ったそれらを、楽しそうに混ぜる誰か。
人の気も知らないで、とぼんやり眺めていると、その誰かも泣いていた。
そうか、助けて欲しいのはお前も同じだったのか。

「こころ」
苦しい 苦しい 苦しい こんなもの もういらない
放り投げてしまおうと開いてみたけど
身体にくっついて離れない
皮膚の下にかくれていた方が まだマシだったのに
これじゃ、なかったフリもできない 誰か 助けて
絵とビジョンの力
自死からの生還「命の叫び」6人展
2024年11月26日(火)~12月1日(日)
於 中和ギャラリー