今日、紹介するのは系統的自由画法!
系統的自由画法では、自由画を継続的に描いていきます。
毎回、心に浮かんだものに焦点を当て、自由に絵にします。
作品が4~5枚になったら、セラピストが、描き手の傾向をまとめ、次のステップを提案します。

気づきと共に新たな自分が生まれても、習慣的反応の行動パターンを手放すには 時間がかかります。
無意識だと、新たな自分より古い習慣的行動パターンを選択してしまいます。
では、新たに生まれた自分を定着させるためにはどうしたらいいでしょう?
今回は、これについて見ていきましょう。

今回の絵は、20 代女性の絵

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4 枚の絵の共通点が見えたかな?
宇宙や空、海など広大な世界が描かれ、一見、気持ちよさそうに見えるね。
でも、アートセラピー的に見ると、青と黄の組み合わせから抑うつ傾向が、それぞれのモチーフ間が離れているところから、人との距離がありそうだね。

さみしさや孤独感があり、架空の幻想や夢に逃げている傾向が伺えるね。

また、激しいタッチと短いストロークの 組み合わせは怒りや不満を表し、やわらかいタッチと長いストロークの 組み合わせはあきらめや抑圧を表す。

彼女は、心の中に苦しい葛藤があるんだね。
そこで、次のステップとして提案したのは、
「自分を含めて人間を描いてごらん」
「楽しかったり、うれしかったり、心がおどる人々との交流を描いてごらん」

そして、次の絵が描かれる。

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人間の出現。
それに色がついた!!
ガンバって、心の殻を破って、描いてくれたんだね。
勇気がいったよね。
「私、三姉妹だから、二人の妹たちを描いたの」
そして、「いつもね、妹たちは私を励まし、心配し、助けてくれるの」とぼそっと話す。

真ん中にいる本人は緊張ぎみで、口も真一文字。
左右の妹たちは、そんなお姉ちゃんをサポートするように肩に手を置き、うれしそう。

彼女の古い習慣である人との距離間や正直さの抑圧を自分で認め、それを手放そうと決意したんだね。
そして、心の底に、もともとある他者への信頼や愛、安心感を自分の中によみがえらせたんだね。
おそる、おそる…だけど、彼女は変わった!!
「私、妹たちが唯一の親友なの」と うれしそうに言う。

定着するための第一歩は、人間の絵を描いた彼女の勇気と挑戦をたたえ、励ますこと!
少し違和感のある新しく生まれた自分をたくさんほめてあげることからスタート。

定着するための2つ目は、選択肢を変える努力をすること。
彼女の場合は、他者によく思われたいために、 自動的に他者の期待に応える行動を取って しまう傾向があった。
無意識にこうしてしまうから、やっかいなんだね。

こうした場合は、まず行動する前に 立ち止まること。
そして、少し間を置くんだね。
それから、自分の気持ちを聞いてみる。
古いパターンを取るのか、それとも、自分の正直さを取るのか…。
そして、意識して、表現してみる。

新しく生まれた行動を習慣化するためには、時間がかかる。
しかも、こうした選択を迫られる機会は、その後も何回かやってくる。
そのたびごとに、間を置いて、新しいことを選択するんだよ。
それができるようになると、新しい行動が定着する。
そして、この変容は、自分自身に対する大きな自信ともなるんだ。

この技法は、いつも本人が無意識にとっている習慣や行動のパターンから脱却し、本来の自分や次のステップを教えてくれるんだよ。
絵を通して変容を起こすことができる、画期的なアートセラピー・テクニックなんだ。